娘が地元の居酒屋さんを新規開拓してきた。
かなり高級な作りの外観と狭い入り口だけど、友人と二人だったので思い切って入ってみたそうだ。
魚料理中心の割烹料理店で、最近開店したそう。
高級魚はもちろん高いが、他は良心的な価格で、飲み物もほぼチェーン店価格。常連がすでに付いていて、娘たちは完全にアウェイ状態だったが、思い切って来たことを大将に話すと、親切にしてくれた上に、「このお客さんに(代金は)つけるから、好きなもの頼んで。」と常連さんを指差し。
「このお客さん」もノリが良くて、「大将の今日のターゲットは俺だから。」と冗談を飛ばしていたらしいが、賄いを〆に出してくれた上に、信じられないほど安かったそうだ。
それではお礼がてら(もちろん、お礼を言いに行くわけではなく)行ってみようと、娘にすぐに予約を入れさせて、翌日出かけた。
入り辛くしているのも、ガラの悪い客や大騒ぎする若い客が来ないようにする防御策のようだ。
大将の自信というか意地が伝わる店作り。
店内は明るく、1階はカウンターで2階はテーブル席だという。
常連が中央にすでに陣取っており、私たちは隅に座る。
初回の客だから当然の席だし不満はなく、むしろほっとした。
代わりにフロア係の男性が、私たちがオーダーに不自由しないように常に斜め後ろに控えてくれるのが親切だと感じた。
とにかく、料理がおいしい。
お通しも鯛の漬けで、まるで一品料理だ。
定番のメニューは少ないが板場の壁に掛けられた黒板に、本日のメニューが所狭しと書かれている。
板場には大将と板さん、飲み物係の若い男性とフロアの男性の4人が配置よく動く。
「おいしいわねぇ、」「私、毎日ここで夕飯食べたい。」と母娘の会話を聞いていた、板さんに「ありがとうございます。」とお礼を言われてびっくりするやら、恥かしいやら。
1時間弱、飲食いして代金はそれなりに高めだけど、もうひとつ贔屓にしてる地元のイタリアンバルより少し高いくらい。
メニューの住み分けならぬ、喰い分けができるようになって嬉しい。
少し定期的に通って、来づらくならないようにしようと母娘で話す。
こういった食の作法や店への作法も、私は池波正太郎氏のエッセイで教えてもらった。
息子が小学校低学年のとき、お昼時に銀座で「お寿司が食べたい。」と言いだした。
上野まで行けば、気取らない回転寿司の店がたくさんあるけれど、息子は「お腹空いた、」ときかない。
そこで、以前知り合いに「銀座ではそれ程高くないよ」と教えてもらった店を思い出して、「築地玉寿司」に行ってみた。
テーブル席が満席で、カウンターの隅に通されたが、子供にお好みを食べさせる母親に見られたくなくて、職人さんに頼んだ。
「盛り込みをふたつ、作ってもらえますか。」
これは池波氏が初めての寿司屋でする、オーダーを真似てみた。
すると、職人さんは「松竹梅」とランクがあることを丁寧に説明してくれ、すんなりとオーダーできた。
この印象と安心感があって、銀座でお寿司は「築地玉寿司」に決めている。
観劇の前後の食事も観劇とセットというか、時間がないからファストフードやコンビニでというのが私はできない。
舞台も楽しかったし、美味しいものも食べた、素敵なお店に行った、そんな日で終わりたいから。
TDCの周りには気に入った店がなくて、少し歩いて神田方面に出たり、遠回りして銀座や丸の内で食事をしてから出かけたことも。
好きなお店との付き合い方は、常連ではないけれど思いだしたように来店してくれる客、何度か見かける行儀のいい客として、軽く会釈してもらえるようでいたい。
そのために、店側に好かれなくても、嫌われることのない流儀を持ちたいと常々思っている。
それから、このクーポンの期限も近いので、娘と買い物がてら出かける。
以前も他のクーポンサイトで利用したことがあって、場末の決して綺麗なお店ではないけれど、女性客も多い不思議な店。
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