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Eternal full moon/under_blog こそりとdeepに語ってます、はい。

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PROFILE
HN:
夜羽(よわ)
性別:
女性
趣味:
可愛い雑貨を集めること
自己紹介:
■wj系の趣味サイトを運営。

■サイトからのみお越しいただけます。ここからサイトへは入れません。

■他人の家族の日常に興味のない方はお引き取り下さいね。
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「誰を見てるの?」
櫻が振り向かないのは、声の主をわかっているから。
すぐ後ろの椅子を引く音の次に座った気配がした。
「そこ、私の席。」
「うん、知ってる、櫻の匂いがする。」
返事に窮して櫻は窓からの暖かい空気を吸い込む。

「精市、」
「ん?」
「精市を探してるのにいないから、柳くんを見てる。」
後ろで幸村がそっと笑う。
「丸井くんが切原くんの背中を叩いたのよ。切原くん、凄く怒って三番コートまで追いかけて行ったわ。」
「ふうん、」
「あ、真田くんが女子に囲まれてる。」
「真田でもモテるんだよ、一応。」
今度は櫻がかすかに笑う。
「逃げてきたの?いいのに。」
「俺はよくない。」

真田に詰め寄っているかに見える女子はプレゼントの包みや可愛らしいペーパーバックを手にしている。
普段は風紀委員長として統率を説いてまわる真田だが、部を応援してくれている彼女らには感謝の意を示しているため、こういった場面では強く出られない。
「そろそろ、蓮二が登場するよ。あいつは理詰めで納得させるから大丈夫。」

上辺はそっけない関りしかないように振舞うレギュラーたちは、同じもののために力を尽くすだけに根底では強く繋がっている。
幸村は、生と死に追い詰められた時期を懐かしむ気持ちが生まれてきたことを自覚するとき、共に苦しみそれでも自分を支えて立ち上がらせてくれた彼らの姿も思い浮かぶのだ。
 

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─ ねぇ、オビトに会わせて。
無造作に結い上げた長い漆黒の髪には俺の眼であって俺のものではない紅さと酷似した美しい文様が黒く縁取られた水晶の珠簪が飾られていた。
 
 
愛に全てをさらわれてゆく
 
 
きっと険しい表情で彼女を俺は見つめたはずだが、口布と額当てが邪魔しているはずだ。
例の本を片手に上忍待機所で長くなりそうな一日を過ごしていた至極平和な時間。
 
 
「どうぞ、」
出し惜しむモンでもない、ただ正面切ってその名を口にしてくる人間が今日までひとりもいなかっただけで、オビトが残した「写輪眼」はこうして俺の体の一部として初め数ヶ月こそ異物の拒否反応が出たが
リンの度重なる手当てでそれはいつしか治まり、これまで数え切れないほどの任務の中で俺を救ってきた。
 
額当てをグイとずらしてやると、彼女は嬉しそうに笑った。
 
─ あたしは嵯紗、ありがとう・・・
 
俺の髪と同じシルバーグレイの眸に自分の写輪眼が映った時間はとても長く感じられた。
じっと無言で見つめ合う俺達の姿をまわりはいったいどう思ったろう。
 
何もなかったように礼だけを残して、彼女・嵯紗は待機所を出て行った。
 
 
「知りたそうな顔してるのね。」
紅の声。
「何を?」
差し出された紙コップは冷たい。
「俺、熱いほうじ茶が好みなんだよね。」
話を逸らそうと思われたらしい。
 
「彼女、あなたよりひとつ下よ。今は特上でイビキのところにいるの。」
「イビキの?」
「と言っても、私と同じ幻術使いだからそっちのほうでイビキをサポートしてるってとこね。アンコとは性格が違うわ。」
どっちにしろ、特上でくの一なら男の俺とは違った修羅場を潜っているんだろう。
紅は知らない。
彼女が「オビト」と言ったこと。
写輪眼のカカシに会いに来た物好き・・・くらいに思っているんだろう。
 
 
─ 少し、調べさせてもらわないとねぇ・・・
 
まだ、アカデミーにいるうちはの生き残りでさえ・・・きっとオビトの名を知らないはずだ。
 
 
─ オビト・・・この眼はいつも厄介なことを連れてくるよ、
 
 
 
 
 
嵯紗はオビトと何の接点もなかった。
マンセルを組んでいたリンは火の国の領主の下に間諜として潜まされそれっきり今日まで消息を聞かない。
医療班出身のリンがそんな運命をたどらざるを得ないほど木の葉が混沌としていて、先の大戦の傷を引きずっていた頃のことだ。
 
─ ま、俺もその後はお決まりの暗部だったし・・・
 
 
俺自身も里外任務が大半だったから彼女の存在は初めて知った。
 
 
両親は忍界大戦で英雄となり、一人で生きてきたらしいが俺達の年代はそういった境遇の人間が多いから気に留めるほどのことではないし、生き延びたがゆえに里への忠誠心が深いとも言える。
 
「上忍師になった感想はどうじゃ。」
笠の下から覗く視線の鋭さは里長としての威厳に満ち、煙管は飴色に光る。
 
アカデミーの教練所は三代目の来訪で静まる。
 
「手応えの無い子供ばかりですね、鍛え甲斐がありません。」
ほぉっほぉっと笑うとカカシ、皆おまえと同じにするでない・・・と続けた。
 
六歳で中忍、大戦での忍不足を差し引いても余りある幼さはその後のカカシの任務遂行に華々しさを添えている。
だが、
 
 
─ そのために俺は、高すぎる代償を払った・・・・
 
欠かさない早朝の慰霊碑への祈りはそのため。
 
 
父は・・・里に謝罪するかの様に命を絶ち、師は里のために自ら死を選び、友は自分の忍としての未熟さ故に犠牲になり。
 
 
カカシは思う。
 
自分が生きることに意味があるのかと。
死なないことに何か理由をつけなければ存在を信じられない、それほどの気持ちに圧されてしまうときもある。
 
「大事なものは、見つからなんだか。」
三代目のカカシに対する口癖になっている言葉。
 
幼い頃から失うことばかりのカカシを三代目は気にかけていた。
里の父であり、導(しるべ)となる人物、長く里に君臨してきたがその人生の中でも弟子である大蛇丸とカカシは年経たずして稀有な忍道を歩んできたと思う。
 
「ははっ、またそのお話ですか。」
カカシは軽く笑う。
 
 
「俺は、大事なものなどもう・・・・・」
 
三代目を見下ろす青い眸は弓成る。
 
「いらないんですよ。」
 
 
せめて、リンが里にいたなら。
カカシは自分の背負ったものが少しは軽くなったかもしれないと今はもう叶わぬことを思う。
リンは、くの一ならば辿るであろう修羅に落とされて生死もわからない。
 
オビトが恋した少女すら自分は守れなかった。
その懺悔は永遠に続く。
 
溜息を吐く代わりに三代目は煙管を一口吸った。
 
 
クナイがかち合う音がする。
実戦さながらの鍛錬もカカシには絵空事だ。
自分が身を置いた戦場はこんな悠長さなどとは無縁。
 
 
生きたいと願ったことは無い。
だが、死にたいと本当に願ったこともまたなかった。
 
自分の命は里のものだ。
死して灰になる日まで里のために生きる。
それがカカシが課した自分への訓え。
 
「いつでも、言ってくるがよい。齢若かれどお前の働きは里を幾度と救ったと言っても過言ではない。一度くらいなら褒美を遣わそう。」
背中を向けて歩き出した三代目に向かって。
 
 
─ 御意。
カカシの抑揚の無い返事が聞こえた。
 
 
 
 
 
 
 
「火の国の領主が代替わりだとよ。」
アスマがエビスに煙草の火を借りながら告げる。
 
「らしいですね、先代もさしてご高齢とは思えませんでしたが。」
三日後に新しい領主がやはり娶ったばかりの奥方と共に三代目に謁見に来るのだという。
 
「私達、上忍師は謁見の場に立ち会うと決められたようです。」
エビスが眼鏡のブリッジを人差し指で上げる。
 
カカシの顰めた眸をアスマが見咎めると口を開く。
「めんどくせぇことこの上ないがな、命をカタに好き勝手出来た暗部とは違うんだ。」
 
 
 
何かが違う、嵯紗と会った日からカカシの心の内に住まう割り切れなさ。
四代目と呼ばれた師の後を追ったつもりだった。
決して命が惜しくて暗部を降りたわけでもない。
三代目の言う大事な何かが見つかったわけでもない。
 
「先生と同じ道を辿れば、見えてくるものがあるかもしれない。」
そんな陳腐な考えはこの時代の里では通用しなくなっているのか?
 
 
 
 
 
「はたけさん。」
 
木の葉茶通りの雑踏でカカシは嵯紗に呼び止められる。
「今日も、オビトに会いに来たの?」
例の本をポーチに仕舞う。
 
「いえ、もう・・・」
言いかけて口を噤む。
 
「お前、オビトのなんなの?」
黙り込まれたことにカカシは苛立った。
訳は自分でもわからない。
だが、うちは一族亡き里でオビトに関わる彼女に怪訝さが打ち消せない。
 
マンセルを組んだあの日。
自分達三人の運命は分かれた。
 
うちは一族でないカカシが写輪眼を移植して帰還したことはうちはの当主の怒りを買ったし、異物でしかない写輪眼はカカシの体を苦しめたがリンは必死になって治療を施し・・・・
 
それはカカシへの捨てきらない恋心なのか、リンを想って死んだオビトへの懺悔なのか聞いたことは終になかったけれど。
 
まるで、写輪眼の身体への定着を待ったかのように、リンには密命が下りカカシの前から姿を消した。
 
生きていればこの嵯紗と同じ齢。
 
「あたし・・・」
嵯紗は何かを言おうとしているがカカシを見上げる頬に涙が伝った。
自分の涙にはっとして嵯紗は頬を指で拭う。
 
カカシが先程のきつい言い方を謝ろうと言葉を捜すうちに・・・
 
「あの・・・さようなら。ごめんなさい。」
 
嵯紗はそれだけ言うと夕刻の人混みの中に消えた。
カカシは・・・過去の消せることの無い悔いを嵯紗に掘り起こされることが、辛く苦しいだけで、決して彼女を疎ましくは思えなかった。
 
 
─ オビトに会わせて・・・
嵯紗もまた、オビトを心に留めているか。
それが、なぜか苛立たしかったのだ。
 
 
 
 
初めに上背のある若い男が現れた。
三代目の前ににこやかに進み出ると一礼し、三代目も恭しく礼を返す。
 
 
後ろから続いて小柄な女性がベールで顔を半分隠した姿で同じように進みでて男と並ぶとベールを外して深く三代目に向かって頭を垂れる。
 
「リン、長らく・・・苦労であったな。」
 
カカシは瞠目する。
 
 
 
─ リン・・・!