忍者ブログ

Eternal full moon/under_blog こそりとdeepに語ってます、はい。

カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
PROFILE
HN:
夜羽(よわ)
性別:
女性
趣味:
可愛い雑貨を集めること
自己紹介:
■wj系の趣味サイトを運営。

■サイトからのみお越しいただけます。ここからサイトへは入れません。

■他人の家族の日常に興味のない方はお引き取り下さいね。
リンク
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析
Script:Ninja Blog 
Design by:タイムカプセル
忍者ブログ [PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

─ ねぇ、オビトに会わせて。
無造作に結い上げた長い漆黒の髪には俺の眼であって俺のものではない紅さと酷似した美しい文様が黒く縁取られた水晶の珠簪が飾られていた。
 
 
愛に全てをさらわれてゆく
 
 
きっと険しい表情で彼女を俺は見つめたはずだが、口布と額当てが邪魔しているはずだ。
例の本を片手に上忍待機所で長くなりそうな一日を過ごしていた至極平和な時間。
 
 
「どうぞ、」
出し惜しむモンでもない、ただ正面切ってその名を口にしてくる人間が今日までひとりもいなかっただけで、オビトが残した「写輪眼」はこうして俺の体の一部として初め数ヶ月こそ異物の拒否反応が出たが
リンの度重なる手当てでそれはいつしか治まり、これまで数え切れないほどの任務の中で俺を救ってきた。
 
額当てをグイとずらしてやると、彼女は嬉しそうに笑った。
 
─ あたしは嵯紗、ありがとう・・・
 
俺の髪と同じシルバーグレイの眸に自分の写輪眼が映った時間はとても長く感じられた。
じっと無言で見つめ合う俺達の姿をまわりはいったいどう思ったろう。
 
何もなかったように礼だけを残して、彼女・嵯紗は待機所を出て行った。
 
 
「知りたそうな顔してるのね。」
紅の声。
「何を?」
差し出された紙コップは冷たい。
「俺、熱いほうじ茶が好みなんだよね。」
話を逸らそうと思われたらしい。
 
「彼女、あなたよりひとつ下よ。今は特上でイビキのところにいるの。」
「イビキの?」
「と言っても、私と同じ幻術使いだからそっちのほうでイビキをサポートしてるってとこね。アンコとは性格が違うわ。」
どっちにしろ、特上でくの一なら男の俺とは違った修羅場を潜っているんだろう。
紅は知らない。
彼女が「オビト」と言ったこと。
写輪眼のカカシに会いに来た物好き・・・くらいに思っているんだろう。
 
 
─ 少し、調べさせてもらわないとねぇ・・・
 
まだ、アカデミーにいるうちはの生き残りでさえ・・・きっとオビトの名を知らないはずだ。
 
 
─ オビト・・・この眼はいつも厄介なことを連れてくるよ、
 
 
 
 
 
嵯紗はオビトと何の接点もなかった。
マンセルを組んでいたリンは火の国の領主の下に間諜として潜まされそれっきり今日まで消息を聞かない。
医療班出身のリンがそんな運命をたどらざるを得ないほど木の葉が混沌としていて、先の大戦の傷を引きずっていた頃のことだ。
 
─ ま、俺もその後はお決まりの暗部だったし・・・
 
 
俺自身も里外任務が大半だったから彼女の存在は初めて知った。
 
 
両親は忍界大戦で英雄となり、一人で生きてきたらしいが俺達の年代はそういった境遇の人間が多いから気に留めるほどのことではないし、生き延びたがゆえに里への忠誠心が深いとも言える。
 
「上忍師になった感想はどうじゃ。」
笠の下から覗く視線の鋭さは里長としての威厳に満ち、煙管は飴色に光る。
 
アカデミーの教練所は三代目の来訪で静まる。
 
「手応えの無い子供ばかりですね、鍛え甲斐がありません。」
ほぉっほぉっと笑うとカカシ、皆おまえと同じにするでない・・・と続けた。
 
六歳で中忍、大戦での忍不足を差し引いても余りある幼さはその後のカカシの任務遂行に華々しさを添えている。
だが、
 
 
─ そのために俺は、高すぎる代償を払った・・・・
 
欠かさない早朝の慰霊碑への祈りはそのため。
 
 
父は・・・里に謝罪するかの様に命を絶ち、師は里のために自ら死を選び、友は自分の忍としての未熟さ故に犠牲になり。
 
 
カカシは思う。
 
自分が生きることに意味があるのかと。
死なないことに何か理由をつけなければ存在を信じられない、それほどの気持ちに圧されてしまうときもある。
 
「大事なものは、見つからなんだか。」
三代目のカカシに対する口癖になっている言葉。
 
幼い頃から失うことばかりのカカシを三代目は気にかけていた。
里の父であり、導(しるべ)となる人物、長く里に君臨してきたがその人生の中でも弟子である大蛇丸とカカシは年経たずして稀有な忍道を歩んできたと思う。
 
「ははっ、またそのお話ですか。」
カカシは軽く笑う。
 
 
「俺は、大事なものなどもう・・・・・」
 
三代目を見下ろす青い眸は弓成る。
 
「いらないんですよ。」
 
 
せめて、リンが里にいたなら。
カカシは自分の背負ったものが少しは軽くなったかもしれないと今はもう叶わぬことを思う。
リンは、くの一ならば辿るであろう修羅に落とされて生死もわからない。
 
オビトが恋した少女すら自分は守れなかった。
その懺悔は永遠に続く。
 
溜息を吐く代わりに三代目は煙管を一口吸った。
 
 
クナイがかち合う音がする。
実戦さながらの鍛錬もカカシには絵空事だ。
自分が身を置いた戦場はこんな悠長さなどとは無縁。
 
 
生きたいと願ったことは無い。
だが、死にたいと本当に願ったこともまたなかった。
 
自分の命は里のものだ。
死して灰になる日まで里のために生きる。
それがカカシが課した自分への訓え。
 
「いつでも、言ってくるがよい。齢若かれどお前の働きは里を幾度と救ったと言っても過言ではない。一度くらいなら褒美を遣わそう。」
背中を向けて歩き出した三代目に向かって。
 
 
─ 御意。
カカシの抑揚の無い返事が聞こえた。
 
 
 
 
 
 
 
「火の国の領主が代替わりだとよ。」
アスマがエビスに煙草の火を借りながら告げる。
 
「らしいですね、先代もさしてご高齢とは思えませんでしたが。」
三日後に新しい領主がやはり娶ったばかりの奥方と共に三代目に謁見に来るのだという。
 
「私達、上忍師は謁見の場に立ち会うと決められたようです。」
エビスが眼鏡のブリッジを人差し指で上げる。
 
カカシの顰めた眸をアスマが見咎めると口を開く。
「めんどくせぇことこの上ないがな、命をカタに好き勝手出来た暗部とは違うんだ。」
 
 
 
何かが違う、嵯紗と会った日からカカシの心の内に住まう割り切れなさ。
四代目と呼ばれた師の後を追ったつもりだった。
決して命が惜しくて暗部を降りたわけでもない。
三代目の言う大事な何かが見つかったわけでもない。
 
「先生と同じ道を辿れば、見えてくるものがあるかもしれない。」
そんな陳腐な考えはこの時代の里では通用しなくなっているのか?
 
 
 
 
 
「はたけさん。」
 
木の葉茶通りの雑踏でカカシは嵯紗に呼び止められる。
「今日も、オビトに会いに来たの?」
例の本をポーチに仕舞う。
 
「いえ、もう・・・」
言いかけて口を噤む。
 
「お前、オビトのなんなの?」
黙り込まれたことにカカシは苛立った。
訳は自分でもわからない。
だが、うちは一族亡き里でオビトに関わる彼女に怪訝さが打ち消せない。
 
マンセルを組んだあの日。
自分達三人の運命は分かれた。
 
うちは一族でないカカシが写輪眼を移植して帰還したことはうちはの当主の怒りを買ったし、異物でしかない写輪眼はカカシの体を苦しめたがリンは必死になって治療を施し・・・・
 
それはカカシへの捨てきらない恋心なのか、リンを想って死んだオビトへの懺悔なのか聞いたことは終になかったけれど。
 
まるで、写輪眼の身体への定着を待ったかのように、リンには密命が下りカカシの前から姿を消した。
 
生きていればこの嵯紗と同じ齢。
 
「あたし・・・」
嵯紗は何かを言おうとしているがカカシを見上げる頬に涙が伝った。
自分の涙にはっとして嵯紗は頬を指で拭う。
 
カカシが先程のきつい言い方を謝ろうと言葉を捜すうちに・・・
 
「あの・・・さようなら。ごめんなさい。」
 
嵯紗はそれだけ言うと夕刻の人混みの中に消えた。
カカシは・・・過去の消せることの無い悔いを嵯紗に掘り起こされることが、辛く苦しいだけで、決して彼女を疎ましくは思えなかった。
 
 
─ オビトに会わせて・・・
嵯紗もまた、オビトを心に留めているか。
それが、なぜか苛立たしかったのだ。
 
 
 
 
初めに上背のある若い男が現れた。
三代目の前ににこやかに進み出ると一礼し、三代目も恭しく礼を返す。
 
 
後ろから続いて小柄な女性がベールで顔を半分隠した姿で同じように進みでて男と並ぶとベールを外して深く三代目に向かって頭を垂れる。
 
「リン、長らく・・・苦労であったな。」
 
カカシは瞠目する。
 
 
 
─ リン・・・!
 

「カカシ・・・」
謁見の間の左右に居並ぶ上忍の中からリンはカカシを見つけると名前を呼んで微笑んだ。
その表情はすでに火の国の新領主の奥方として申し分ない。
 
「妻に昔話をさせたやりたいのですが・・・」
カカシに笑いかけ、リンの背を押したのは夫だった。
 
 
 
 
慰霊碑に行きたいとリンは真っ先にカカシに告げた。
 
「リン、生きていたんだ。」
「ご挨拶ね、カカシ・・・でも、そう思われても仕方ないよね。」
 
リンに下った木の葉からの密命、それは火の国の領主一族の中に潜む他国の抜け忍の炙り出しだった。相手の油断を誘うには女が都合よかったし、長期に渡ることは必須だった。
何よりも忍ではない火の国の人間に溶け込まなくてはその任務は遂行出来なかったから。
 
「辛かったのは初めの数年・・・あとは彼がいてくれたから、」
恥ずかしそうに俯く姿は初々しい新妻だ。
 
 
 
慰霊碑、昼でも尚暗く・・・厳かな想いに囚われる場所。
 
「オビトの後、すぐ先生が・・・あんなことになって、」
「里の未曾有の惨事だったしね。」
「カカシも・・・もしかしたらって思った。でも生きてるってわかって安心したのも束の間、すぐに暗部へ行ったでしょう?いくら写輪眼を持ってるとは言え、心配だったな。」
 
四代目の教えを乞うた三人。
今ならわかる。
自分を含め、オビトもリンも忍として高い能力を秘めていたのだ。
ただ、カカシの開花が早かっただけで。
 
 
「毎年、カカシの誕生日にね。」
リンはオビトの名を指先でなぞって・・・
 
「カカシの生死の・・・写輪眼の経過の・・・報告を極秘で受けていたの。」
「リン・・・」
「だって、生き残ったふたりじゃないの。」
 
リンも引きずっていたのだ。
後悔は自分だけじゃない。
オビトの身体からカカシへと移植を施したリンの短く長い時間の胸の内を少年だったカカシは思いやることが出来なかった。
 
 
「火の国に渡って、あたしは初めてあのときの自分を見つめ返すことが出来たの。オビトの死は里にしてみれば闘忍が戦場で命を落とした・・・それだけに過ぎない。でも、」
 
風に揺れる黒いベールが慰霊碑という場所に似つかわしい。
 
 
「毎年、カカシの写輪眼のことを聞くたびにあたしの心はオビトでいっぱいになっていった。」
「やっと、気づいた。」
「うん・・・遅すぎたけど。」
「それで、いいんじゃない?」
「彼、似てるの・・・オビトに。生きてたらこんな人になったんだろうなって。」
 
 
 
 
「俺の写輪眼のために誕生日のたびに伝令を使ってたわけだ。」
三代目がよく許したねぇ・・・・と呆れるカカシにリンは真剣な表情で話し始めた。
 
「いいえ、知らせてくれたのは火の国で一番最初に仲良くなった里のくの一よ。」
 
 
─ 彼女は・・・・
 
 
五歳のときから火の国の左大臣の一の姫の遊び相手として里から送り込まれたの。
でも、死んだ母親が幻術に秀でたあの木の葉の黒百合さまだったから幼くても能力(ちから)は察せるでしょう。お遊び相手と身代わりを兼ねたようなものね。
優しくて、綺麗な人よ。
オビトのこともカカシのことも何でも話せたわ。
 
 
でも、その一姫が輿入れして、私と入れ替わるように三代目様の意向で里に戻ることになったから。
そのときに・・・・カカシのこと、頼んだの。
生きて誕生日を迎えているか、写輪眼が紅く左目に存在しているかを。
 
言い終わってリンは小さく呟く。
「オビト、あたし達・・・幸せになってもいい?」
 
答えなど、あるはずも無いけれど。
「ごめんね。」
 
リンの涙交じりの声にカカシは青い瞳を閉じる。
 
 
 
 
「嵯紗、何もお前でなくても良いのじゃぞ。」
里は、お前の母にも・・・幼いお前にも苦労を掛けさせたと三代目は続ける。
 
「私は、感謝しています。カカシの誕生日にここで生きている彼に影ながら会わせてくださった事を。」
リンに告げるために請け負ったはずだった。
なのに、それがカカシへの恋情に変わっていくのを嵯紗は止められなかった。
 
「もう、いいんです。」
別れなら、告げてきた。
だから、二度と里に戻れないこの任務に思い残すことなく就ける。
 
初めてカカシと話せた、近づいてその写輪眼に触れることが出来た。
それだけで、嬉しかったから。
 
今日まで三代目はカカシの誕生日にはわざと里を空けない任務を入れ、火影邸のこの部屋で気配を消してもらいながら会わせてくれたから。
 
 
「それに長期の里外任務はくの一にとって決して珍しいことではありません。」
嵯紗は三代目に笑いかける。
「それでは・・・」
深く一礼して、嵯紗が下がろうとしたとき・・・・身体を誰かの腕に引き寄せられた。
 
「・・・・・どうして、」
「嵯紗だって気配を消して俺を見てたんでしょ。やられっ放しは性に合わないからね。」
 
真っ赤になりながらも、嵯紗はカカシの腕から逃れようとするが強い男の腕はびくともしない。
「三代目、いつかの褒美をもらえますか?今日は俺の誕生日なのでそれも兼ねてくださればありがたいのですがね。」
 
三代目はカカシにニヤリと笑い一言発した。
「あぁ、持って行くが良い。ただし、戻すことはならぬ、生涯賭して大事にせい。」
「御意。」
言い終わらぬうちに瞬身で消えた。
 
 
 
火影岩の頂上は凪て、手が届きそうな星が瞬く。
 
 
「リンが幸せになったように、嵯紗にも幸せになって欲しい。」
カカシの額当ては外されて、写輪眼が嵯紗を射る。
「俺の傍で・・・・」
強く抱きしめられて。
 
 
「放してよ、このエロ上忍!」
「俺の告白をそう返すわけ?」
口布を下ろして・・・はぁ、とカカシが大げさにため息を吐く。
 
「だったら、荒療治・・・」
 
夜風に晒された頬に熱い手のひらが添えられ、写輪眼の色を眸に映したのは一瞬のこと。
嵯紗がぎゅっと目を瞑ると冷たい唇が重なった。
 
背中に回る硬い腕、大きな手のひら。
震える膝を立たせたくて嵯紗はカカシの首に細い腕を巻きつけ身体を支える。
 
何から話せば、嵯紗はわかってくれるのだろう、とカカシは考える。
嵯紗がカカシに姿を晒したあの日から駆け足で日々は過ぎたけれど・・・・オビトとの関わりを躍起になって調べたことを笑い出したくなると同時に、嫉妬していたことに気づきもしなかった。
 
カカシが生きた理由はあったのだ。
嵯紗は嬉しかったと言った、カカシが生きていることが嬉しかったと。
 
 
「俺も、嵯紗もひとりの寂しさを知っている。」
「うん・・・」
「生きることが、思うように行かないということも。」
「う・・・ん、」
「でも、誰かのために生きるなら・・・・」
肩越しに囁かれる。
 
 
 
 
「嵯紗、俺はお前のために生きるよ。」
 
 
 
返事は出来なかった、咽喉に流れた涙が止めてしまったから。
そのかわり、こくこくと頷くことしか出来なくて。
 
 
─ オビト、この眸と一緒にお前は本当にいろんなものを残してくれたよ
 
一生、持つことなど無いと・・・思っていた愛しいと言う感情を・・・・注ぐのは腕の中の珠玉。
 
 
PR

Post your Comment
Name
Title
E-mail
URL
Comment
Pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
Trackback URL